恐怖の泉

人間の怖い話「ダンスパーティのおじいさん」

私は子供の頃、社交ダンスを習っていました。
クリスマス辺りになると、スクールの先生がホテルでパーティを開いており、毎年というわけではありませんでしたが、私も参加したことが何回かあります。
これはその時、体験した話です。

そのスクールには同年代の女の子達も結構参加していたので、まとまって過ごしていました。
皆でダンスをしたりもしましたが、食べながら過ごす事がメインで楽しく食事会といった雰囲気です。
大部分は大人ですし、先生以外の大人と踊るというのはあまりなかったので、良い経験にはなった…で終われば良かったのですが。

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その大人の中に、しつこくダンスへ誘ってくる男性がいました。
見た目はおじさんというよりは、もうおじいさんに近い方という印象でした。
もちろん、最初にお誘いを受けたときは了承しました。

2回目のお誘いを受けた時は、私がトイレへ行こうとしたタイミングだったのでお断りし、普通だったらそこで終わると思います。
ですがその人は、トイレにまで私の後をついてきたのです。

ひょっとしておじいさんもトイレかと思いましたが、私がトイレから出ると目の前に立っています。
そして私が戻ろうとすると、後ろから歩いてくるではありませんか。
私のトイレが終わるのを待っていたのです。

そして、トイレは終わったんだから踊れるよね、と言わんばかりに勝手に私の手を引っ張って、一緒に踊ることになってしまいました。

社交ダンスでは男性が女性の背中を触るのは当たり前なのに、急に嫌悪感を感じました。
動揺してしまった私は踊り終えるとまたトイレへ入り、とりあえず落ち着くことにします。
トイレには既に母が偶然居て、とてもホッとしました。

トイレから出ると、またあのおじいさんが目の前にいました。
私が母と一緒にいるということを知らなかったのか、母を見た瞬間におじいさんはバツの悪そうな顔になり、会場へ行ってしまいました。

まさか2回もトイレ前で待ち伏せされるとは思っていなかったので、会場に戻った私は友人達に「こういうおじいさんがいるから、気を付けて」と話しました。
そのおじいさんの様子を見張っていると、会場をうろついては私と同年代の子にばかり声をかけています。
私はその後、声をかけられたりついてこられることはありませんでしたが、今度は他の子たちが執拗に誘われたり、後を追われたりするようになってしまいました。

先生に言えば良いのではと思う人もいるかもしれませんが、せっかく皆が楽しんでいるパーティに水を差したくないと、私達の意見は一致したのです。
子供どうしで常に固まって、1人になる子が出ないよう気を配り、どうしても離れる場合は誰か大人についてきてもらうことで対処しました。
みんなでまとまって動くようになってからは、おじいさんも手が出せなくなったようです。

こうして無事にパーティがお開きになった後、油断していた私の所へあのおじいさんが来て
「今日は楽しかったよ。」
と耳打ちして去っていきました。
この瞬間、私の体は凍りつき血の気が引きました。

おじいさんはきっと、悪気があった訳では無いのだと思います。
先生も、ちょっと変わっている人という認識はあったようですが、トラブル等は聞いたことが無いと言っていました。

本人に悪意が無くとも、おじいさんの言動は私や友人を怖がらせるには十分でした。
ほんの少しだけ、おじいさんに女性や子供の目線に立った配慮があれば、私達も楽しめたのではないかと思った出来事でした。

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